人と企業をつなげる活動から企業支援へ

岐阜県関市の中心地にある複合施設「わかくさ・プラザ」。この3階にある関市ビジネスサポートセンター「Seki-Biz（セキビズ）」には、主婦から企業の経営者まで毎日多くの人が事業の相談にやってきます。Seki-Bizの副センター長を務める松浦俊介さん（35歳）は滋賀県出身。2016年4月のSeki-Biz開設をきっかけに関市に移住し、市内の経営者や個人事業主の相談に乗っています。

松浦さんが起業や経営に興味を持ったのは高校生の時。アルバイトで一生懸命働いて稼ぐ大変さや、親から勧められた株式投資で運良く価格があがった経験から、世の中にはさまざまなお金の稼ぎかたがあることを知ったそう。「どうせ稼ぐなら世の中に意義のあることをしたい」と大学では経営学を専攻し、同時にインターンシップを通して学生と企業をつなげるNPO法人の活動に加わります。

2009年には静岡県富士市で企業の支援を行う「f-Biz（エフビズ）」に転職。
「これまでインターンシップで人を送り込むことにより企業の成長を目指していましたが、f-Bizの『人やお金を使わず、提案力で会社を変えていく』という姿勢に衝撃を受けました。私も会社の成長を加速していくような存在になりたいと思ったんです」

その後、大学をはじめさまざまなフィールドで企業を支援した松浦さんは、2016年に関市でf-Bizモデルのビジネス支援センター「Seki-Biz」が誕生することを知ります。関市は「刃物のまち」のイメージしかなかったそうですが、新しい土地での事業支援に興味を持ち、Seki-Bizのビジネスコーディネーターにエントリー。応募があった147名の中から、副センター長に抜擢されました。

▲Seki-Bizの事務所は広々とした明るい雰囲気。

関市で起業を考える移住者の相談も

Seki-Bizは1回1時間の相談を何度利用しても無料というシステム。経営に関するアドバイスから商品開発、販路開拓、起業・創業支援など、幅広いサポートを受けることができます。最近では、起業を考える移住者からの相談も増えているそう。例えば、県外で料理の修行を積んだ移住者が、関市でとんかつ屋をオープンしたいと相談に訪れたときのこと。松浦さんは時間をかけてていねいにつくる姿勢をPRしてみては、とすすめました。
「手間暇を惜しむことなく美味しさにこだわり、ていねいに良いものをつくる姿勢はこの店のアピールポイントであり、関市でも受け入れられると思ったんです」

移住者ならではの視点でこの土地の良さを見極め、相談者の強みを引き出す松浦さんのアドバイスは、関市の経営者たちに大きな勇気と希望を与えています。

▲「どんな会社でも必ず活路はあると思い、経営者の方と向き合っています」と松浦さん

新しい挑戦を生み出す拠点にしたい。

Seki-Bizを利用した企業・経営者は、開設から2年半で約560社（名）、相談件数も約4000件と年々増加。女性や子育て中の人も相談に訪れるなど、利用者の層が広がっています。
「関市はすぐれた経営者や職人さんが多く、魅力的な技術や商品が数多くあります。だからこそ発信力を高めていけたら、より広くアピールできるはず」

とはいえ、実践するのはあくまで相談者。これだったらできるかも…と思ってもらえるような提案をしながら、新しくチャレンジできる機会を生み出したい、と松浦さんは語ります。一歩を踏み出した相談者のパートナーとして、これからも松浦さんは関市の企業に寄り添い続けます。